命令は守って破る
                                                            平成29年12月25日
                                                                               
 私達は限られた人生の中で、いったい何がやりたいのか。これを考える時間も無いまま、今の年齢になっている方も多いのではないでしょうか。
 私はと言いますと、時間があったら、お金があったら・・・。やれない理由をただ並べるだけで、何もせずに過ごしています。そもそもやりたいこととは何かを見つけることが出来ずに生活してしまっているのです。
 
 もし、何かしてみたいことがある方は、その道で成功している人を見つけて、まねることから始めると良いと言われています。まねてみたいと思う人を見つける事が出来たら、それはとても素晴らしい事です。大げさかもしれませんが、人を成長させるものとして、最も手に入れたいものとは何かと言いますと、尊敬すべき師を見つける事だそうです。その人の知識、技そして心の面での師を見つける事が出来るとは、大変恵まれた事なのでしょうね。

 中国の古典の世界でも、師を見つけるとの大切さが書かれています。孔子の弟子の中でも大変優秀な方に子貢という方がみえます。子貢は大変頭の良い方で、孔子の教えをどんどん覚えていきます。しかし、大変優秀だと言われていた子貢でしたが、初めの頃は孔子の言うことをそのまま覚えるだけで、これを実践に移すことが出来なかったと言われる方もいます。尊敬すべき師から言われることを素直に従うことは大切な事です。しかし言われたことをそのまま他人に伝えるだけでは、言われたことをただ覚えるだけになってしまい、指示が出るまではいつまでも待っていることになってしまいます。自ら考えて動くことが出来なくなってしまい、成長が止まってしまうのです。子貢は孔子から沢山の指摘を受けますが、これを全て受け入れます。ここが子貢の素晴らしいところです。孔子の死後、この教えを自らのものとして、子貢は多くの教えを弟子達に残すこととなるのです。

 子貢は孔子という師との出会いで、人として成長する事が出来、その教えで、素晴らしい功績を残します。なぜ功績を残せたかと言いますと、孔子の指摘を腐らず真に受け止め、その教えをただ暗記してそのまま利用したのではなく、自ら考え、そして実践することで成果を上げたのではないでしょうか。
 人から聞く良いお話は、大変聞き心地が良く元気をもらうことが出来ます。良い話には大きな力があるのです。しかし、これを聞いてそのまま実践していたからといって、大抵は上手くいかないことが多いのではないでしょうか。また、組織の中で上司からの命令をそのまま部下に伝えようとしても、部下は思うように動くことはないでしょう。人から聞いた良い話でも、上司からの命令であったとしても、必ずこれを理解し、自分の考えとして伝える事が大切なのです。景気の良かった時代でありましたら、もしかしたら伝言ゲームのように動く人間で良いのかもしれませんが、現代では、自分の置かれた立場、時代の流れなどに合わせてこれを良い意味で教えを破り、そしてただ暗記していただけの師の教えから離れ自分独自のものにする必要があるのでしょう。