成功しても悩み                                                           

                        平成24年10月25日
 「はやぶさ」という小惑星探査機が、2003年5月に内之浦宇宙空間観測所より打ち上げられました。その後2010年6月13日、サンプル容器が収められていたカプセルは、「はやぶさ」から切り離されて、パラシュートによって南オーストラリアに着陸しました。この話は、映画にもなりましたので、皆様ご存じのことと思います。専門的な難しい話については、全く分かりませんが、このプロジェクトの中で大変興味深いエピソードがあります。
 「はやぶさ」の企画は限られた資金の中で計画がされていたそうです。その為、部品を手作りで一つ一つ作製してくれる小規模な工場にお願いをして作ってもらったそうです。それでも、特許などの関係などから、アメリカの企業から購入しなければならない物もあったそうで、「はやぶさ」の故障の原因となった備品は、全てアメリカ製の物であり、日本製の物は完璧に近い性能だったそうです。
 そして、計画の最終段階となり、まもなく打ち上げとなる頃、ある技術者はイオンエンジンに欠点があることに気がついたのです。それは、ほんの一本の配線が足らない事でした。しかし、長い年月と時間をかけて組み立てをしてきましたので、この段階でこの事を持ち出してしまうと、全ての計算のやり直しが必要となり、大変なお金がかかってしまいます。また、この技術者にはその欠点が本当に欠点であるかどうか自信がありませんでした。そこで、もう一人の技術者と相談をし、大変悩み抜いた結果、全ての人に内緒でその配線つなげてしまいました。
 その後、打ち上げは成功し、探索を終えもうすぐ地球に到着すると言う時に、大きな問題が発生しました。それは、イオンエンジンが完全に止まってしまったのです。これにはプロジェクトマネージャーもあきらめるしかなかったのです。しかし、このエンジントラブルに対して、克服する方法が有ることをエンジン技術者から聞かされます。それは、最後につないだ配線のことだったのです。これにより、「はやぶさ」は地球に戻ってくることが出来たのです。
 この話とはスケールが違いますが、よく判断に迷う場面があります。それは、決められたルールに従ったままの方が良いのか、それともルールを無視して行動してしまうのか。もし自分であったら。又は、ルールを無視して勝手な行動した社員に対してどう処分をするのか。様々な考え方が有ることでしょう。なぜなら、日本人は、結果だけを重んじる事は無く、計画を進めていく上での過程も大切にする習慣が有るからです。 この判断にはどちらを正解にする事も出来ませんし、またどちらも間違っているとも言えません。こうした判断を涼しい顔をして「予想通りです」と背中には冷や汗をかきながら事業を遂行する事が経営者には必要なのです。「ルールですから」と、簡単に判断を下してしまう人間になってしまうのは、何か物足りないような気がしますよね。