知 好 楽

平成25525

 

 税理士試験を受験するための資格の学校では、毎年5月になりますと、本番の試験に対応する為の模擬試験が始まります。8月の上旬に本番の試験と成りますので、約3ヶ月間、模擬試験を繰り返し練習をする事になります。

 模擬試験と言っても、形式上はテストです。テストはいくつになっても嫌なものです。

 

 企業経営において、毎年決算の度に作成する決算書よって、この一年間の成績を書面にて見ることになります。この決算書を、昨年の決算書と比較する人もいれば、同業他社の決算書と比較をする方もみえます。決算書の読み取り方は人それぞれですが、売上に対して費用が多ければ赤字ですし、流動資産に対して流動負債が多ければ、資金繰りが悪い状態で有ることは間違い有りません。

 

 テストにしても決算書にしても、過去の出来事を結果として見ることに成ります。その為、今までの努力の仕方や生活態度を数値化され、尚且つ、これを自らが認識することと成り、目の前に反省する材料を突きつけられる事は、決して気持ちの良いものではないはずです。

 また、努力をすると簡単に言っても、その努力が良い結果として表れないことも少なくありません。スポーツ選手が練習に練習に重ねて試合に臨んでも、必ず勝てるとは限らないのです。努力をするとは、なかなか難しい事です。練習=勝利と成らないところに難しさがあるのです。

 

 では、テスト勉強の結果が不合格であるならば、そのテスト勉強は無駄であったのでしょうか。これを二宮尊徳はこう表現しています。

「春に種を蒔き、夏に草をとって水をやるからこそ、秋に収穫を迎えられる。」

 春に種を蒔いたからといって、日照りで枯れてしまうかもしれない。だからといって、春に種を蒔かなければ、絶対に作物を収穫することは出来ない。ならば、無駄だとしても種を蒔くことをやめてはいけない。

 そして、努力をする方法として「知好楽」と表現しています。 

 知る者は、好んでやる者には及ばない。好んでやる者は、楽しんでやる者には及ばない。

 

 人の生き方にしても、企業の経営にしても、思い通りに行かなかったり、苦しい思いをする事がほとんどです。良かったと思える事はほんのわずかです。この様な世の中だからこそ、将来の目標に向かって、今を楽しむのです。楽しんでいる人とは、過去を気にせずに気楽に物事を考えている訳ではありません。良きも悪きも結果は結果として適切に受け入れ、この先の将来像を思い描き、そして苦しい時を楽しむ。それはまるで食べ物で苦みを好むのと同じです。甘い食べ物ばかりが、いつも美味しいとは限らないのです。