石垣の強度                                                             

                      平成25年7月25日
 天守閣を守る石垣を、現代の建築技術で作るとしたら、同じ形、同じ大きさの石をセメントでつないで作ってる様です。その完成した様子は、きれいで頑丈に作ってあります。しかし、セメントの無い時代の石垣は、大小様々な石を使って、職人が経験を頼りに並べて、地震に耐える事の出来る石垣を作っていたそうです。これは、大小様々な大きさの石が、互いに作用しあってこそ生まれる強度だそうです。
 人の集まりには、必ず様々な意見と立場を持ち合わせた方がいるものです。性別、年齢、家族など、全く同じ環境に置かれている人はいません。ですから、責任者がどんなに大きな声で指示を出しても、決して思うように動いてはくれず、なかなか先へと進んではくれません。人の集まりとは、そんな集まりですから、石垣のように簡単に意思統一をはかり、強度を増す事など出来る訳有りません。にもかかわらず、そこで起きたトラブルは、責任者である長たる人間が負う事となるのですから、簡単に気を緩める事も出来ません。だから、○○長と言う肩書きを与えられた時は、心してかからないと、とんでもない事になるのです。 企業経営もこれと同じで、面倒な事ばかり起こるものですから、合理的に物事を考える方でしたら、企業経営を率先して行おうと思う人はいないはずです。
 しかし、面白いことに創業する方は、ある時期より減ってはきたけれど、無くなってはいません。どの様な組織にしても、人が集まる集団の組織の長となる事は、合理的に考えれば決して正しい判断とは言えないのです。にもかかわらず、創業を志すと言う事は、数値的な計算では決して測ることは出来ないほどの魅力が有るからではないでしょうか。
 中国古典に、「創業は易く守成は難し」という言葉があります。言葉通りに考えれば、国は起こすよりも、長く守っていく事の方が難しいとなるのですが、実はこの言葉は、「創業は決して簡単な事では無い、しかし時が経つにつれ、気が緩んでくると国を守る事は困難になる。だからこそ、創業時の気持ちを忘れずに気を引き締めて国を守らねば、簡単に崩壊してしまうであろう。」とい意味が有るのです。創業時には、様々な意見を持つ人達の意見を統一させる事が出来たから、創業する事が出来たのです。難しいとされる意思統一が出来るのですから、そこに創業の魅力が有るのではないでしょうか。
 責任者の言う事だけを「ハイ」と言って、考える事なく従う人間ばかりを集めた組織は、早い時期に良き結果が出てくるかもしれない。しかし、この組織体制で長きにわたり繁栄させる事は難しいのではないでしょうか。常に初心を忘れることなく、様々な意見を受け入れ、そこから社会貢献の為に生まれる揺るぎない志こそ、様々な人達を納得させるだけの力があるはずなのです。 自分の周りに、自分の意見を簡単に聞く人間しかいなくなってきたとき、その組織は間違った方向へと進んでいるのかもしれません。