人員整理をしないとは
                                                              平成27年6月25日

 伊那食品工業という会社をご存知でしょうか。私はある雑誌で知ったことをきっかけに、岡崎商工会議所から有志の集まりで会社訪問もさせて頂きました。この機会は大変勉強になり、特に100年カレンダーと言われる物を見て、とても衝撃を受けたことを覚えいます。
 100年カレンダーとは、今から100年分のカレンダーを作って販売をしているのですが、その利用方法が素晴らしいのです。伊那食品工業に新たに入社する社員の研修のために作られたものだそうですが、まず自分の80才になる誕生日に印をつけます。すると、その80才の誕生日が、自分の命日だと教えるのです。若い人は永遠に生きる事が出来るかのように思いがちですが、そのカレンダーには自分の死ぬ日が書かれている訳ですから、ショックを受ける訳です。これによって、人生には限りが有り、時間を大切にしませんと、一度しかない人生を無駄に使ってしまうことになります。この最も基本となることを教えるそうです。
 折角この世に生まれて来たのですから、納得のいく生き方をしたいと思うことはとても大切な事だと実感が湧いてくるのです。
 
 そんな伊那食品工業の会長である、塚越寛氏の著書の中に企業経営において次の五つの項目を満たすことが必要だと書いてあります。

 1.無理な成長をしない
 2.安いというだけで仕入れ先を変えない
 3.人員整理をしない
 4.新しく、より良い生産方法や材料を常に取り入れていく
 5.どうしたらお客さんに喜んでいただけるかという思いを、常に持ち続ける
 この五つの項目は、当たり前の事ではありますけれど、当たり前には出来ないものです。

 3つ目に書かれている「人員整理をしない」とは、どの様な人でも雇い続ければ良いというものではないそうです。自己啓発を怠り、進歩せず、会社の成長についていけない人には会社をやめてもらう事も必要だと言っています。人材教育に力を入れている塚越会長ですからこそ、教育に対する姿勢は優しくもあり、厳しくもあるのです。

 現代経営の参考書には、常に金銭的な成長、将来予測そして経営判断が書かれています。確かに金銭面で立ち行かなくなったらその企業は倒産となるわけですから、決して軽んじていいはずがありません。しかし、金銭的な目標を掲げ、突っ走っていては、いつか息が切れてしまいます。
 法人は生きている。つまり金銭面での成長は結果であり、目的ではないということです。人間でいえば、身長が伸びることも成長といいますが、これは努力でどうにかなるものではありません。身長が大きいからといって全てが良いわけではなく、人としての心を成長させることこそ、努力が必要なのです。
 物があふれた現代、人の価値観も大きく変わってきました。これから企業として生きて行くには、企業もその価値観を大きく転換する必要が来ているのではないでしょうか。消費者は何を価値として捉えているのか考え直す必要があるようです。